2022年12月07日

お金の世の中

「撫で肩 ときどき怒り肩」 群ようこ 文春文庫 

「結婚 志願ショー」 p104〜

 「先日、高校時代の友だち二人と会った。 女性のほうとは年に一度くらいは会っているのだが、男性のほうは十三年ぶり。 彼とお互いに指さしつつ、
「わあ、全然顔が変わっていないじゃないか」
とひとしきり騒いでも、どうも雰囲気は暗い。実は、彼の八年間つきあっていた彼女がさっさと別の男と結婚してしまい、意気消沈しているのをきき、私たち女性軍が彼の慰安と激励の会をしようということになった。

 彼は背高く頭脳明晰、次男、性格最良、容姿は若かりし頃の石坂浩二といった具合で、唯一の難点は給料があまり良くないことらしいのだが、それを差し引いてあまりあるほどの好青年である。

 あれこれ話をしていて、
「そういえばむかし、テレビ集団見合いみたいな番組があったね」
 といいつつ同時に私たちの頭の中に浮かんだのは、東京12チャンネル、金曜日夜九時から放送されている「結婚! 志願ショー」のひどさであった。 この番組には毎週一人ずつ医者、レーサー、エリートサラリーマン、デザイナー、青年実業家などといった、俗にいう社会的に地位も金もある適齢期の男性が登場する。 そして結婚志願というふれこみの若い女性たち五人が、とりあえず未来の妻の座をめざして自分の長所をアピールするのだが、この出てくる女がみんなひどい娘ばっかりであきれかえってしまう。 番組の中に組み込まれている”水着審査”でも堂々と水着姿をさらし、「ウソー」「ヤダー」「信じられなー い」といった三語族で、
「本当に普通の家の娘さんなんだろうか」
とただおどろいてしまうばかりである。

 ところが彼女たちは女奴隷市の如く番号をつけた水着姿で五人並べられ、ゲストの芸能人に、
「そうね、彼には一番か四番の方がいいと思うわ」
といわれてもニコニコしている。 彼女たちには女のプライドというものなんかないのであろう。 ま、〇〇会社のキャンペーンギャルとやらが名門女子大卒で、「最初は水着になるのがとっても恥ずかしくてたまりませんでした」といかに彼女が普通のお嬢さんであるか書いてあるのを読んで、

「バカもん。 コンテストの間だって水着になる機会はいくらだってあっただろうに、ブリッ子するんじゃないよ。 普通のお嬢さんがそんなことするわけないじゃないか」
 と怒っていたのであるが、もしかしたら現代の普通のお嬢さんというのはそういうタイプに様変わりしてしまったのかもしれない。

 五人の中から一人を選べる男も、鼻の下を伸ばしてだらしがないったらありゃしない。 金にものをいわせている男と、プライドもなく金目あての女が出てくる番組なんて一体どこが面白いのだ。
 私たちは深夜、三十女の禁句といわれる、”今どきの若い女は”という言葉を発しつつ、
「絶対彼にはいい人をみつけてあげようね」 と心に固く誓ったのだった。」


昭和の番組
posted by Fukutake at 07:58| 日記