2022年07月29日

相対性理論?

「人類が知っていること すべての短い歴史 (上)」 B.ブライソン 楡井 浩一 訳 新潮文庫 平成二十六年

一般相対性理論 p256〜

 「一般相対性理論に含まれるすべての概念の中で、最もややこしく実感しにくいのは、時間は空間の一部だという発想だ。 わたしたちは本能的に、時間を永久不変で絶対的ととらえ、何ものも規則的な時の刻みを乱すことはできないと考える。 しかしじつのところ、アインシュタインによれば、時間はさまざまに絶え間なく変化している。 形さえあるのだ。 それは時空と呼ばれる不思議な次元の中で、三次元の空間と深く関わって ースティーヴン・ホーキングの表現を使えば「密接不可分に結びついて」ーいる。

 ふつう時空を説明する場合には、平らで柔軟な物質(例えばマットレスや引き伸ばしたゴムシート)の上に、鉄球のような重くて丸い物体を置いた場面を想像してもらう。 鉄球の重さが、それの載っている物質にわずかな伸びとたるみを生じさせる。 これは、太陽のような巨大な物体(鉄球)が時空(物質)に及ぼす効果とだいたい似通っている。 物質が伸びて湾曲し鉄球を包み込む。 このとき小さめの鉄球をシート上に転がすと、鉄球はニュートンの運動法則に従って、直線を描いて進もうとする。 しかし巨大な物体とたるんだシートの傾斜に近くにつれて、鉄球は下へ転がり、避けようもなく巨大な物体のほうへ引き寄せられてしまう。 これが時空のたわみによって生まれた重力だ。

 質量を持つすべての物体は、宇宙というシートに小さなくぼみを作る。 つまり、デニス・オーヴァバイも記したように、宇宙は「究極のたるんだマットレス」なのだ。 この視点から見れば、重力はもはや、ものというより結果に過ぎなくなる。 物理学者ミチオ・カクいわく、重力は「”力”ではなく、時空のねじれによる副産物である」。カクはこう続ける。 「ある意味では、重力は存在しない。 惑星と恒星を動かしているのは、空間と時間のゆがみなのだ」

 言うまでもなく、たるんだマットレスのたとえには限界がある。 時間の効果を組み込んでいないからだ。 しかし組み込もうとすれば、今度はわたしたちの頭のほうに限界が生じてしまう。 三つの部分から成る空間のひとつの部分から成る時間を含み、すべてが格子縞の織物の糸のように絡み合っている次元を思い浮かべることは、ほとんど不可能だからだ。 いずれにしても、スイスの首都にある特許局の窓から外を眺めていた青年が、とてつもなく大きな概念にたどり着いたという事実の重みには、誰もが感慨を覚えることだろう。」

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重力というものはない!

posted by Fukutake at 11:01| 日記