「代悲白頭翁(部分」 劉希夷*
「今年花落顏色改 今年花落ちて顔色改まり
明年花開復誰在 明年花開いて復た誰か在る
已見松柏摧爲薪 已に見る松柏の摧かれて薪と爲るを
更聞桑田變成海 更に聞く桑田の変じて海と成るを
古人無復洛城東 古人また洛城の東に無く
今人還對落花風 今人還た対す落花の風
年年歳歳花相似 年年歳歳花相似たり
歳歳年年人不同 歳歳年年人同じからず
寄言全盛紅顏子 言を寄す全盛の紅顔子
應憐半死白頭翁 応に憐れむべし半死の白頭翁
此翁白頭眞可憐 此翁白頭真に憐れむべし
伊昔紅顏美少年 伊《こ》れ昔 紅顔の美少年
(訳)
今年も花が散って娘たちの美しさは衰える。
来年花が開くころには誰が元気でいるだろう。
私はかつて見たのだ。松やコノテガシワの木が砕かれて薪とされるのを。
また聞いたのだ。桑畑の地が変わって海となったのを。
昔、洛陽の東の郊外で梅を見ていた人々の姿は今はもう無く、
それに代わって今の人たちが花を吹き散らす風に吹かれている。
来る年も来る年も、花は変わらぬ姿で咲くが、
年ごとに、それを見ている人間は、移り変わる。
お聞きなさい、今を盛りのお若い方々。
よぼよぼの白髪の老人の姿、実に憐れむべきものだ。
この老人の白髪頭、まったく憐れむべきものだ。
だがこの老人も昔はあなた方と同じく紅顔の美少年だったのだよ。」
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劉 希夷*(りゅう きい、651年(永徽2年) - 679年(調露元年))