「噴飯 惡魔の辭典」 安野光雅、なだいなだ、日高敏隆、別所実、横田順彌
平凡社 一九八六年
「老い」 p39〜
「生まれた時から始まる過程。でも、親から見ると、その時期は成長と見える。自分一人で生きなくてはならなくなった時、はじめて、これは老いなのだと気が付く。二十一から、二十二になっても、未婚の女性なら成長と感じるのに、結婚した後ではどうしても老いと感じてしまう。(なだ)
「惡魔の辭典」などを書いてみようと思うこと。(日高)
便所に入り、便器の前に立ち、ズボンのチャックをおろしたところで、あらためてそのことに気付き、「もしかしたら私は、小便をしようとしているのかもしれないぞ」と考えるようになった時、はじめて自覚する或る傾向のこと。つまり、自分がそいつであることを理解するために、思索が必要になってくる状態のことである。(別府)
それまで一度も捕まったことのない掏摸が、余生を刑務所の中で過ごそうと考え、わざと警察につかまること。(横田)
無意識にではあるが、近づいてくる自分の死が、残る者にとって悲しみの少ないものであるようにするために、敢えて醜悪であろうとする……(安野)」
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70になると否応もなく、感じること。