「ベトナム帰還兵の証言」 陸井三郎訳 岩波新書 1973年
日系兵士 p45〜
「日系兵士の立場
軍人はみな、グーク*はグークだという態度でいることは明らかです。そしてアメリカでは軍隊に行く以前から、アメリカに住むアジア人にたいして、こうしたひどい人種差別的態度があることもたしかです。しかし、どうやら無関心な態度で軍隊にはいってくる人たちもいますが、いったん軍隊にはいると洗脳されて、アジア人は人間以下だという考えをうえつけられてしまいます。ベトナム人だけでなく、アジア人全部です。
この点を軍隊でぶつかった私の個人的な経験に関連させてみたいと思います。海兵隊にはいるまえ、私は白人とチカノ*が住むところで育ち、そこでは人種差別はそれほど強くなく、私もそんなに苦しめられずにすみました。海兵隊にはいるとき、私は、おれは国のためにつくすのだ、勇敢な海兵隊、立派なアメリカ市民になるのだ、と思っていました。サンディエゴのUCMDでバスを降りると、私をむかえた最初の言葉ー 訓練係の下士官が私にいったのは、「ほほう。今日はおれたちの小隊にグークが来たぜ」ということばでした。これは私には打撃でした。自分では立派な若者だと思っていたからです。それでもそれ以来、新兵兵舎で過ごした全期間、私はグークのモデルに使われたのです。教室へ行くと、諸君はVC、北ベトナム軍とたたかうのだ、と教えられます。そして教官は私を見て「ほら、あそこにいるやつは、まったくやつらにそっくりだ」というのです。軍隊は人種差別を少しも抑えたことがないのがおわかりでしょう。南ベトナム人、北ベトナム人だけでなく、世界中のアジア人全部に対してそうなのです。アメリカ人がアジアで姿をみせるところはどこでも、このことは証明されています。アジア人と、制度としてのアメリカ軍との間には摩擦が絶えません。かれらは、人びとを服従させ、人間の姿をした人間以下の生きものとして扱うのです。」スコット・シマブクロ上等兵(第三海兵師団第一三連隊第一大隊C中隊)
「グークの見本
私は第一海兵師団第五連隊第一大隊にいました。
私は、軍隊およびベトナムでアジア人にたいしてとられている人種差別を非難します。私は軍隊に行く以前は、人種差別をあまり強くは感じていませんでした。そうです。それはありうることです。軍隊にはいって、私は人種差別がはびこっているのを体験しました。新兵兵舎でバスを降りたとたん、私はホー・チ・ミンといわれました。訓練のあいだじゅう、私はジャップ、グークのモデルに使われました。そして私は知ったのです。おれはこんな国のためにたたかおうとして海外に行くのだ、と。
私は新兵兵舎での実例を、ほんの少し告発できたにすぎませんが、ここでベトナムでの経験にうつりたいと思います。ベトナムにいるあいだ、私は歩兵部隊にいましたが、なん度か後方へ行ったことがあります。ほとんどの海兵隊員は、ID(身分証明書)もみせないでPXに出入できますが、私はIDをみせても黄色人種だからという理由で入れてもらえなかったことがあります。ベトナムでも私はたえずグークの実物見本に使われました。アメリカに帰ってから、たくさんのアジア人仲間の男女が復員軍人やロサンジェルスのアメリカ人からグークといわれていることを知りました。」(マイク・ナカヤマ兵卒)
グーク* アジア人全体への蔑称
チカノ* メキシコ人
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白人の度し難いアホさ加減。