「論語の新研究」 宮崎市定 岩波書店
郷黨 第十 238 より P259〜
「(新訳)
君主に命ぜられて賓客の接待をする時は、緊張した面持ちになり、きびきびとした足取りで歩む。立ったままの客に会釈をするとき、手を左右に向けるたびに、衣服の前後がひらひらと動く。小走りに足を運ぶ時は、羽を拡げたように軽快だ。客が帰ったあと、必ず復命して、後を振りかえられなくなるまでお見送りしました、と言った。
賓不顧を、普通には、客が満足したので顧みずに去った、のだと解釈するが、これはおかしい。賓客は立去る時に見送りの主人側に対し、時々振りかえって挨拶をするのが礼儀であり、また賓客が遠去かって最後の挨拶をするまで見送るのが主人側の礼儀なのである。この所はそれを言ったもので、レッグ訳、華英四書にはこの箇所の本文を、
The visitor is not turning round and more.
と訳し、更にその説明として、
The ways of China, it appears, were much the same anciently as now. A guest turns round and bows repeatedly in leaving, and the host can not return to his place till these salutations are ended.
と注釈を加えているのは甚だ適切である。」
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お客様を見送る際の礼儀