2021年06月23日

ジジイは役に立つか

「私が、答えます」ー動物行動学でギモン解決!ー 竹内久美子 文藝春秋社 2001年

繁殖能力 p60〜

「質問:小生は今年で八十歳になります。男としての機能は、とっくの昔に失いまし た。だがその私がまだ生き続けている...。人間はなぜ、繁殖能力を失った後にも生き 続けるのでしょうか?

答え: あまりにも多くの方から寄せられるご質問です。 逆にお聞きしたいのですが、なぜ繁殖能力だけを気になさるのでしょう。もしかする とあなたは、自分自身で子をつくれなくなった、だからもう自分には存在価値がないの ではないか、とお考えではないでしょうか。そうだとすれば、それは大きな間違いで す。 自分の子をつくることだけが問題ではありません。生物に世界は直系はもちろんの こと、傍系も含め、自分と共通の遺伝子がいかに残るかという論理で動いているので す。人間も生物である以上、この論理に従っているはず。たとえ自分自身ではもはや 子をつくることができなくても。子や孫、甥、姪、イトコなどの繁栄の手伝いをする。そ うして自分の遺伝子を間接的に残しているのです。 特に女の場合、それは疑う余地なくはっきりしている。女は小さい子どもの世話は得 意中の得意。実際男より女が長生きする理由の一つとして、孫やひ孫の世話をする ため、ということが考えられているくらいです。おばあさんの存在意義は絶大です。 男の場合はどうでしょう。 男は抱っこぐらいは出来ますが、ヘタです。まして、オシメの取り換えや食事の世話 など困難に近い。やったとしても、迷惑がられるのがオチでしょう。こうしてみると一見 したところ年老いた男にはあまり存在意義がありません。しかし、何か意味があるの です 男が子や孫、あるいはその他の血縁者の繁殖の手伝いができるとしたら...、それ はおそらく間接的なもの。たとえば、男が何か社会的に高い地位に就いているとし て、 「えっ、あなた、あの○○の息子なの!」「彼はxx会社会長の孫なんだって」みたいな感 じで息子や孫、あるいは甥がモテるということでしょう。もちろんそのとき、男自身の遺 伝子も同時に彼らを介して増えます。 松下幸之助さんのような、大成功した企業の創業者などは非常に長生きだと言わ れます。たとえ経営にほとんどタッチ出来なくなったとしても、ただ彼が生きているとい うだけで企業にプラスの効果を及ぼすからでしょう。 しかし、成功した男が長く生き続けることには、もっと重大な意味がある。それがそ のネーム・ヴァリューによって子や孫が有利に繁殖するということ。 もっとも、そんな ビッグな存在でなくても、地域のリーダーであるとか、何らかの世界でちょっと名の知 れた存在であるというくらいでも、子や孫の繁殖には十分役立つはずです。...」

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そう願いたい
posted by Fukutake at 06:07| 日記