2021年04月16日

報酬

「噴飯 惡魔の辭典」 安野光雅、なだいなだ、日高敏隆、別所実、横田順彌
平凡社 一九八六年

報酬 p231〜

 「人間は、働く必要がないにもかかわらずやみくもに働きたがる唯一の動物である。つまり報酬制度というのは、人々のそうした働きに対する評価を実際以上に低く示し、人々に働くことの絶望を教えるためのものなのであるが、それでもなお人々は、更に働きたがるのだ。いっそのことその評価額を、絶望的なほど高くしてみたらどうだろうか。(別所)

 あてにしていると、なかなか受けられず、あてにしていないと、やっぱり、受けられないケースの多い、仕事や骨折りなどに対するお礼。(横田)

 謝すべき「何等かの行為」によってひきおこされる精神的負担を無くするために、金品を贈ってバランスを保とうとすること。賃金と違って算定基準がないため、互いに完全なバランスを期待することはできない。
 怒るべき「何等かの行為」に対する、金品の要求。仇討、祟り、などもバランスを指向する報酬の一種とみなすことができる。(安野)

 「あんた、ホーシユーって、どういうものなの。教えてちょうだい。教えてくれたら、チュして上げるわ」
 まだ、日本語のよく出来なかった外国人女性が質問した。それに答えるのは作家、某氏である。
「そんなこと簡単さ、そら、今、教えてあげたらチュしてあげるといったろう。そのチュがホーシューなのだ」
「あら、いやだ、わたしなら、そんなものより、お金できちんともらうわ。ホーシューって、つまりおんなの乱発するから約束のことなのね。分かった。」
と相手はいった。こうして、某作家は、報酬という言葉を教えた報酬を得ることができなかったのである。(なだ)

 世の中すべてが、いやいやながらも動いてゆく原動力。報酬 (日高)」

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posted by Fukutake at 08:27| 日記