「ギリシア悲劇名言集」 ギリシア悲劇全集編集部 岩波書店 1993年
「起こってしまった事態に腹を立てるべきではない。そんなことをしても何にもならないのだから。むしろ当事者がその事態に正しく対処するならうまく行くだろう。
些細なことに怒るのは大変見苦しい。
親しい仲の者が互いに争うとき 怒りは、恐ろしくまた癒しがたいものとなります。
上手な骰子(さいころ)使いには、出た目に満足してコマを進め、運が悪いなどと嘆かないのが似つかわしい。
支配者は三つのことに心しなくてはならない。まずは人間を支配しているということ、二番目には法によって支配すること、三番目にいつまでも支配するのではないということ。
苦労があるのは当然のこと。神々の下す運命に最もみごとに耐える者こそ賢い者なのだ。
舌というものは少しも信用できませんもの。他人のことだと、その考えに忠告することも心得ているけれど、自分のこととなるとたいへんな禍いを蒙ってしまうものです。
奇妙なことだが、我々は誰しも名声のある人には、生きているあいだは妬みを抱くが、死んでしまえば褒めるものである。
一緒に悲しんでください、悩み苦しむ者は涙を分かち合うことで苦しみが軽くなるのを感じるものです。
哀れな、死すべき身の人間たちの一生とはこうしたものなのだ。完全に幸せということもなければ、完全に不仕合せということもない。運が良いかと思えば、今度は不運に見舞われるのだ。とすれば、どうしてわれわれは不確かな幸せの内にあるあいだでも、苦悩を忘れて、できるだけ楽しく生きようとしないのだろう。
暮らし向きの悪い人々にむかって露骨に不愉快そうな顔をすることのないように、あなただって同じ人間の子なのだ。
ほどほどの妻、ほどほどの結婚を分別をもって手にすることが死すべき人間には最上のこと。」
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