2020年01月28日

倦む事なかれ

「医師は最善を尽くしているか Better: a surgeon’s notes on performance」 アトゥール・ガワンデ 原井宏明訳 みすず書房 2013年

あとがき より
医学生への五つのアドバイス(その3)
p234〜
 「三番目のアドバイスは、「何か数えろ」である。われわれはこの世界についての科学者にならなければならない。もっとも単純化して言えば、これは数えることである。実験室のペトリ皿に載った細胞のなかから、特定の遺伝子異常をもったがん細胞を数える。臨床医も治療で合併症を生じた患者の数を数えられる。決まった時間に何人の患者を診たか、何人が外で待っていたかでもいい。数える対象は重要なものでなくていい。研究費も要らない。何かを数えるかについてただ一つの要件は、それがあなたにとって興味を惹く対象だということだけだ。
 私がレジデントだったとき、手術後に患者さんの体内に器具やガーゼなどをおき忘れることがどのくらいあるのか数えはじめた。滅多に起こらない。手術一万五000回に一回の割合で起きることを発見した。…
 決められたようにガーゼの数を数えることを看護師が怠ったからなのか、看護師の数が不足していると警告したのに医師が無視したからなのかを知りたいと考え、ミスが起きる原因の数を数えてみた。どちらも滅多に起こらないことがわかった。そうするうちに、もっと洗練された数え方をするようになった。器具が体に残された患者と、そうならなかった患者を比較するようにしたのである。こうしたミスは緊急手術を受けた患者や、予定外の方法による手術を受けた患者、たとえば、虫垂炎の手術をするつもりで開腹したらがんが見つかった場合に圧倒的に多いことを発見した。
 数字に意味が見えてきた。ガーゼや器具を看護師が手術中に数えるのもミスなしに行うのは大変である。それが緊急状態だったり、手術が途中で変更になり、他の器具を新たに持ちこまなければならないとなると、さらに大変なことになるのは理解できる。こうしたとき、私たちがやりがちな、ミスを犯した者を罰するというやり方では問題を減らせないことにも気づいた。技術的な解決だけが減らしてくれる。そして、器具やガーゼの動きを自動的に追跡できる機械を他の同僚とともに私も使うようになった。
 何かを数えて、その結果が興味深いと思ったならば、あなたは面白いことを学ぶことになるだろう。」

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まずデータを集めろ。

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posted by Fukutake at 08:40| 日記