2018年03月20日

軍首脳の浅才を恨む

「中国文明の歴史 11」 中国のめざめ  宮崎 定一
 中公文庫 2000年

海軍条約(1921年)

245p〜

 「ワシントン条約は当時激化しかけた軍艦建造競争を中止させ、軍備縮小の名の下に、アメリカの覇権を確立する目的をもっていた。もちろん当の目的は日本の海軍保有量の制限である。
 アメリカは当時世界無比の大艦隊建造の計画を進め、日本はこれに八・八艦隊で対抗する構えであった。ワシントン会議において、アメリカ国務長官ヒューズは爆弾動議を提出し、アメリカは建設中のものも加えて主力艦十五隻を廃棄するから、日本、イギリスもこれに見合うよう、それぞれ建艦計画を削減することを強要した。結局、各国の主力艦保有量の比率は、イギリス・アメリカ各十、 日本六、 フランス・イタリア各三・五 にしよう、という提案であった。
 (中略)
 これに対し最も強硬に反対を唱えたのは日本であった。日本の輿論は強く対米七割を主張していた。ことにアメリカの提案とおりだと。アメリカ側はまだ建造にも着手もしていない架空の予定艦隻を廃棄するのに対し、日本はすでに完成に近付いている巨艦陸奥のスクラップにしてしまわなければならなくなる。
 (中略)
 当時の日本はなんといっても軍国主義万能の時代であった。たとえ社会的にもっともっと重要な問題があっても、それらは闇から闇に葬られて、新聞も騒がず、世間もなんとも思わない。ところが、ひとたび軍部が動きだすと、皆が大騒ぎするのであった。軍備には国力不相応な金を使うが、それは将軍たちの既成勢力を保存する目的が強かった。彼らは世界の進歩を感じとるセンスに欠け、いつまでも巨艦巨砲主義のとりこになっていた。世の中はすでに航空機の時代に入っているのに気付かず、第二次大戦が進行している最中にでも、武蔵や大和などという役にたたぬ巨大軍艦を造りあげて、世界の物笑いの種になった。

 駆逐艦一隻造る金で、立派な研究所がひとつできたであろう。国力を考えず、学問・技術の水準を知らず、ひたすらアンバランスな軍備増強に熱中したところに、身のほど知らずの日米戦争に突入する不可避性がひそんでいたのでないか。返す返すも肝に銘ずべきは、軍人を政治に参与させるべきでないという点である。」

---
宮崎先生渾身の筆致。
posted by Fukutake at 10:48| 日記