2018年02月05日

都合に合わせ自分をだます

「ヤバい経済学」-悪ガキ教授が世の裏側を探検する-
スティーブン・D・レヴィット スティーヴン・J・タブナー 望月 衛 訳

110p〜

社会通念
 「通念(conventional wisdom)という言葉を作ったのはウルトラ筆達者な経済学の賢人ジョン・ケネス・ガルブレイスだ。「私たちは真理を自分に都合のよいことに結びつける」と彼は書いている。「自分の利益や幸せと一番相性のよいことを真理だと考えたり、あるいはしんどい仕事や生活の大変な変化を避けるために一番いいやり方を正しいことだと思ったりする。また、私たち
は自尊心を強くくすぐってくれることが大好きだ」。ガルブレイスは続けて、経済・社会的行動は「複雑であり、その性質を理解することが精神的に骨が折れる。だから私たちは、いかだにしがみつくようにして、私たちのものの見方に一致する考えを支持するのだ」。

 アメリカにおけるホームレスの最近の歴史を考えてみよう。1980年代の初め、ミッチ・スナイダーという名のホームレス擁護派が、アメリカには約300万人いるとぶち上げ、当然のように世間の注目を集めた。100人に一人以上はホームレス?そりゃどう見ても多すぎるよ、でも…うむ、専門家がいっているわけだしなあ。
 彼は学生の聴衆に向かって、1秒ごとに45人のホームレスが亡くなっていると語ったとも言われている。−−なんと毎年14億人ものホームレスが死んでいるわけだ(ちなみにその頃、アメリカの人口は2億2500万人だった)。
 結局スナイダーは300万人のホームレスという数字のことを問い詰められて、実はでっち上げだったと白状した。

 広告も通念を創造するいい道具だ。たとえばリンステンが手術用の強力な消毒液として発明されたのは19世紀である。その後、蒸留したものが床用洗剤や淋病の薬として売られるようになった。しかし、大ヒットするのは1920年代になってからのことで、用途は「慢性口臭」対策だったーその頃のよくわからない医学用語だが、ようは臭い息のことだ。リンステンの新しい広告に出ているのは打ちひしがれた若い男女だった。結婚しようと思ったのに、相手の腐った息に嫌気がさしたのだ。「あんなので彼とやっていける?」きれいな女の子がそう自問しているのである。
 リンステンが売り出したのは、うがいよりもむしろ口臭のほうだ。たった7年の間に、メーカーの売上高は11万5000ドルから800万ドルを上回るまでになった。」

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「ステーキを売るな、シズルを売れ」。感情、嗜好に直接訴えるコピーです。
posted by Fukutake at 10:21| 日記