2017年08月07日

ともかく雇用を最優先に!

「誤解だらけの構造改革」小野 善康 日本経済新聞社 2001年

いまやるべきことは何か
227P〜

 「結局、重要なのはお金ではなく人である。人びとはおカネこそ財産と思っているが、おカネはただの紙であってそれはなにも生み出せない。本当の富を生み出すものは人が持つ労働資源であり、人こそが日本の財産なのである。おカネは、単に人が働いて生み出す物への請求権の所在を明らかにするための約束事にすぎない。本当の財産である人の力を殺していては、何も生まれず、そのために国民が豊かになることはあり得ない。それなのに現在の構造改革は、おカネばかりに目を奪われて、本当の財産である労働資源を無駄にしようとしている。
 いま政府に求められるのは、切り捨て構造改革(*)から人材活用政策への転換である。

 ◯ 不況は宿題解決の好機

 景気がどうであろうと、日本にある労働資源が常に有効活用されていれば、国民は何も困らない。したがって、好況期には民間に経済活動をまかせ、不況が来たら政府が労働資源を活用すれば、雇用不安も生活不安もないのである。
 好況期には、民間も頑張るから政府は余計なことはせずに、社会的には何がやり残されているかをじっくり考え、リストアップしておく。たとえば、大量に発生するゴミの問題や温室ガス、エネルギー不足問題、高齢化問題などである。また、国債をすべて償還して財務状態をきれいにしておき、自分の出番が来るのを待つ。そうして、いざ不況になって民間の自律的活動水準が鈍ってきたら、積極的にそれらの宿題をすべて解決していけばいいのである。
 この原則さえ頭に入れておけば、不況は怖くない。それどころか、たまには不況が来てくれなければ、政府が好況期にやり残した宿題を本腰を入れて解決する機会が、なくなってしまうではないか。
 それなのに現実には、好況で廃棄物や温室ガスが多量に出るときになって、あわててその対策を講じる。また、道路が混んで大変だから東京を迂回する環状道路をもっと造らなければならないとか、東京の周辺地帯を結ぶ鉄道網が不足して困るとか言う。ところが不況になって、いざそれらを解決する段になると、それをする設備も人材も余っているのに、いくら使ってもなくならないおカネの倹約ばかりが気になって、そんな時代ではないとか、不要不急の社会資本整備は凍結すべきだとか言い出す。こうして、結局は何もできなくなるのである。
 もうこうした失敗の繰り返しは、いいかげんに卒業しようではないか。

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クルーグマン先生の言いですね。
(*)小泉内閣時の構造改革政策を指す(筆者注)
posted by Fukutake at 08:46| 日記