「天国の両親へ」安田高之(66) 秋田市 産経新聞「朝晴れエッセー」より
「43年前に、父さんと母さんから受け継いだ旅館が大変なことになっています。
昨年はおなじみさんのビジネス客もほとんど泊まらなくなり、お祭り、スポーツ大会も全部中止で、対前年比の売り上げ53%減という悲惨を通り越した結果でした。
国と県の宿泊支援事業も、うちのような温泉旅館でもない街場の小さな宿には、ほとんど恩恵がありませんでした。
40年前に結婚した女房と頑張って、いざというときのためにためてきた会社の預金は空っぽになりました。国からの持続化給付金はありがたく使わせてもらいましたが、2月中には支援対策で借りたお金に手をつけざるを得ません。
つらいです。苦しいです。心が折れそうです。
でも、大正生まれで戦争を生き抜いた父さんと母さん。戦後は何度も挫折しながら、新しい商売を始めた父さん。その父さんを支えながら、自分絵も商売を始めて繁盛させた母さん。
私が15歳のとき旅立った父さんとは、大人の話もできませんでしたね。その分、母さんから厳しく仕込まれました。「一番安いお客さんを大事にしろ」「お金はないときためるものだ」、今でも座右の銘です。
俺、絶対に生き残ります。父さんと母さんが始めた旅館を石にかじりついても続けていきます。お願いです。夢に出てきて私を励ましてください。」
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これが現実。