「民話の世界」 松谷みよ子 講談社学術文庫 二〇一四年
嫁さのぼがーん P85〜
「何とも大らかで、ユーモラスなのは、屁ッぴき嫁さの話である。『聴耳草子』(佐々木喜善)にあるのは、およそ次のような話である。
昔、あるところに嫁がきた。毎日青い顔をして鬱いでいるので、姑が心配して「どうしてそう鬱いでいるのか、わけがあったらいわせ」ときいてみると、嫁はしょんぼりして「私には一つ悪い癖がござります」というた。姑は重ねて「どういう癖か」ときくと「屁をたれる癖で」とますます下をむいた。姑は呆れて「何をいうやら、行儀作法にも程というものがある、そう青くなるほど我慢してはからだにわるい。今日は丁度兄さんもいねえから、さあさあ、思う存分気を晴らしたがいい」といった。
嫁はひどく喜んで、「それでは御免こうむって致しますが、私のはただの屁ではないから、おっかさんはあの庭の臼へしっかりつかまっていてくだされ」といった。姑もこれには驚いたが、仕方がないから庭へ出て臼にしっかりとつかまっていると、嫁はやがて着物の裾をまくって、ぼがんッと一つ大きなのをたれた。とたん姑は臼ごと吹きとばされ、馬舎の梁にしたたか腰を打ちつけて怪我をした。
そこへ兄さが帰ってきた。たまげてわけをきくと屁のせいだという。兄さは歎いて、たとえ俺は一生妻を持たぬことがあるとも、現在の親を屁で吹きとばして、怪我をさせるような嫁子は困る。里へ帰そうと嫁を送って出た。途中、ある村を通りかかると、浜の方から山を越えてきた駄賃づけの者共が、道ばたの梨の木に石を打ちつけて取ろうとしていたが、一つも梨の実は取れない。嫁子は「おらなら屁ででも取ってみせるのに」と笑うと男共はひどく怒って、「何をいうか、そんだら屁でこの梨を取ってみろ、取れないときにはお前のからだを貰うぞ」と罵った。「よし取りましょう。そんだら今いったとおり、もし屁で梨を取った時には、お前達の馬と積荷を下さるか。取れない時には私に体はお前達のものだ」「これは面白い。そうきめるべ」と話はまとまった。そこで女はしずかに裾をまくり、例のやつをぼがあんッとぶっ放した。すると大きな梨の木が根こそぎ、ワリワリと吹き倒されてしまった。嫁子は約束通り、織物七駄、米七駄、魚荷七駄、あわせて二十一駄の荷と馬を受け取った。
それをみた息子は、こんな宝女房をどうして里へ帰されようかとて、家へ連れて戻った。
この話は南から北まで分布し、人々の人気も大きい。「嫁御の屁五臓六腑を駈けめぐり」という江戸時代の川柳があるというが、屁をすることも許されないような嫁の存在は、また屁のように見下げられてもいた。」
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遁世の愉しみ
「方丈記」 (付 現代語訳 簗瀬一雄 訳注) 角川ソフィア文庫
第三十三段(遁世の生活)
(現代語訳)
「いったい、人間の友人関係にあるものは、財産のある人を大切にし、表面的に愛想のよいものとまず親しくなるののだ。必ずしも、友情のあるものとか、すなおな性格なものとかを愛するわけではない。そんなことなら、人間の友人なんか作らずに、ただ、音楽や季節の風物を友とした方がましだろう。人の召使いというものは、賞与が特別に多く、恩恵をたくさん受けられるのを第一とする。けっして、いたわって使ったり、生活が平穏無事だということをば問題にしないのだ。そんなふうだから、召使いなんでなしで、自分自身を召使いにした方がましだ。どうやってわがからだを召使いにするかというと、もし、しなければならないことがあれば、その時には、自分のからだを使うのだ。疲れてめんどうくさく感じないこともないが、他人を使い、他人をやとって世話する気苦労よりは、らくだ。もし、歩かなきゃならないことがあれば、自分の足で歩くのだ。疲れるといったって、やれ馬だ、鞍だ、牛だ、車だと、めんどうな思いをするよりはましだ。今、からだ一つを分けて、手と足とで二つのはたらきをする。手の召使いと、足の乗りものは、まったく自分の思うとおりだ。からだには、心の苦しみがよくわかるので、苦しい思う時は休めるし、気の進む時は、使うというわけだ。使うといったって、そうたびたび度を過ごすことはない。からだがだるくなっても、それは自分の気持ち次第だから、心を悩ますことなんか、ありゃあしない。まして、いつも歩いたり、いつもからだをうごかすのは、天性を養っていくことになるはずだ。どうして、のんべんだらりと休んでいようか。他人を苦しめるのは、罪つくりなことだ。どうして、他人の力など借りようか。衣料や食糧だって、また同じことだ。葛で織ったそまつな着物、麻布の夜具、何だって手に入ったものを着ればよいし、野に生えているよめな*、山の峰でひろえる木の実、それだって命をつなぐことぐらいはできる。他人と交際しないんだから、みすぼらしい姿を人前にさらして、恥ずかしかったなんて、後悔することもないんだ。食べるものが少なければ、かえって、そまつなものでも、自分の努力に相応したさずかりものとして、ありがたくいただけるというわけだ。こうした楽しみは、なにも金持ちに対して、皮肉を言うのではない。ただ、自分一人の身の上で、昔と今との生活をくらべてみるばかりなのだ。
いったい、出家遁世してからは、他人に対する恨みもないし、恐れると言うこともなくなった。いのちを天の支配のままにまかせているのだから、惜しんで長生きをしようとも思わないし。また生きていることがいやになって、早く死にたいとも思わない。わが身は空に浮く雲と考えて、あてにもしないし、不足とも考えない。一生の楽しみは、うたたねをしている気軽さに尽きるし、この世の希望は四季おりおりの美しい風光を見ることに残っているだけだ。」
よめな* 野菊と呼ばれる植物で(嫁菜)。若葉を食べた時の味がいい。
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第三十三段(遁世の生活)
(現代語訳)
「いったい、人間の友人関係にあるものは、財産のある人を大切にし、表面的に愛想のよいものとまず親しくなるののだ。必ずしも、友情のあるものとか、すなおな性格なものとかを愛するわけではない。そんなことなら、人間の友人なんか作らずに、ただ、音楽や季節の風物を友とした方がましだろう。人の召使いというものは、賞与が特別に多く、恩恵をたくさん受けられるのを第一とする。けっして、いたわって使ったり、生活が平穏無事だということをば問題にしないのだ。そんなふうだから、召使いなんでなしで、自分自身を召使いにした方がましだ。どうやってわがからだを召使いにするかというと、もし、しなければならないことがあれば、その時には、自分のからだを使うのだ。疲れてめんどうくさく感じないこともないが、他人を使い、他人をやとって世話する気苦労よりは、らくだ。もし、歩かなきゃならないことがあれば、自分の足で歩くのだ。疲れるといったって、やれ馬だ、鞍だ、牛だ、車だと、めんどうな思いをするよりはましだ。今、からだ一つを分けて、手と足とで二つのはたらきをする。手の召使いと、足の乗りものは、まったく自分の思うとおりだ。からだには、心の苦しみがよくわかるので、苦しい思う時は休めるし、気の進む時は、使うというわけだ。使うといったって、そうたびたび度を過ごすことはない。からだがだるくなっても、それは自分の気持ち次第だから、心を悩ますことなんか、ありゃあしない。まして、いつも歩いたり、いつもからだをうごかすのは、天性を養っていくことになるはずだ。どうして、のんべんだらりと休んでいようか。他人を苦しめるのは、罪つくりなことだ。どうして、他人の力など借りようか。衣料や食糧だって、また同じことだ。葛で織ったそまつな着物、麻布の夜具、何だって手に入ったものを着ればよいし、野に生えているよめな*、山の峰でひろえる木の実、それだって命をつなぐことぐらいはできる。他人と交際しないんだから、みすぼらしい姿を人前にさらして、恥ずかしかったなんて、後悔することもないんだ。食べるものが少なければ、かえって、そまつなものでも、自分の努力に相応したさずかりものとして、ありがたくいただけるというわけだ。こうした楽しみは、なにも金持ちに対して、皮肉を言うのではない。ただ、自分一人の身の上で、昔と今との生活をくらべてみるばかりなのだ。
いったい、出家遁世してからは、他人に対する恨みもないし、恐れると言うこともなくなった。いのちを天の支配のままにまかせているのだから、惜しんで長生きをしようとも思わないし。また生きていることがいやになって、早く死にたいとも思わない。わが身は空に浮く雲と考えて、あてにもしないし、不足とも考えない。一生の楽しみは、うたたねをしている気軽さに尽きるし、この世の希望は四季おりおりの美しい風光を見ることに残っているだけだ。」
よめな* 野菊と呼ばれる植物で(嫁菜)。若葉を食べた時の味がいい。
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posted by Fukutake at 07:38| 日記
2021年10月22日
笑える英会話2
「参考書や英会話本に載っている 『笑う英会話2』」
草下シンヤx北園大園 彩図社 より 第二弾
「1 He was all but nude.
彼はほとんど裸同然だった
2 Grow up, man! How old do you think you are?
大人になれよ! いったい何歳になると思ってるんだ
3 She made the most of her sex appeal.
彼女はその性的魅力を十分に利用した
4 When told, “What a Cinderella story!” She chucked happily.
「玉のこしね」と言われて、彼女はくくっと嬉しそうに笑った。
5 The man became more dismal since his devorce.
彼は離婚後よりいっそう陰気になった
6 A tramp set the house on fire.
浮浪者が放火した
7 That hair style is out.
あの髪型は流行遅れだ
8 I didn’t know Mr.Rea, our math teacher, does moonlighting at Seven-Eleven.
知らなかったけど、私の数学の担任レア先生がセブン・イレブンで夜のバイトをしているの
9 Today’s meal is fuss-free!
今日のごはんは手抜きします
10 baldhead!
ハゲ頭!
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草下シンヤx北園大園 彩図社 より 第二弾
「1 He was all but nude.
彼はほとんど裸同然だった
2 Grow up, man! How old do you think you are?
大人になれよ! いったい何歳になると思ってるんだ
3 She made the most of her sex appeal.
彼女はその性的魅力を十分に利用した
4 When told, “What a Cinderella story!” She chucked happily.
「玉のこしね」と言われて、彼女はくくっと嬉しそうに笑った。
5 The man became more dismal since his devorce.
彼は離婚後よりいっそう陰気になった
6 A tramp set the house on fire.
浮浪者が放火した
7 That hair style is out.
あの髪型は流行遅れだ
8 I didn’t know Mr.Rea, our math teacher, does moonlighting at Seven-Eleven.
知らなかったけど、私の数学の担任レア先生がセブン・イレブンで夜のバイトをしているの
9 Today’s meal is fuss-free!
今日のごはんは手抜きします
10 baldhead!
ハゲ頭!
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posted by Fukutake at 08:18| 日記