2021年05月07日

未確定を楽しむ

「不便の益」 川上浩司  『BEYOND SMART LIFU』日立京大ラボ より 日本経済新聞出版 2020年

 好奇心と問う心を喚起する p108〜からの抜粋。

 「… わくわくする気持ち、好奇心なんかも、僕は不便益そのもののように感じています。あえて不便なシチュエーションを作ることは、「何が起こるんだろう」というか好奇心や期待感を発生させる必要条件にもなり得るからです。

 JALのマイレージサービスに「どこかにマイル」というユニークな企画商品があります。通常の必要マイル数の半分以下のマイル数で特典航空券(往復)に交換できる代わりに、行き先は旅行者が決めるのではなく、日本国内の四つの候補地の中から航空会社側が決定するという仕組みです。申込から3日以内には、行き先が知らされるそうです。おそらくJALとしては、予約や空席状況を考慮して、シートロスを減らすために発案したんじゃないでしょうか。僕としては、この企画にもう少し捻りを加えると、不便益的に非常に面白くなるかな、と思っています。パスポートだけ持参してもらって空港に集合してもらうとか。期日も行き先も、空港でチケットを渡されるまでまったく知らされないとか、ですね。行き先が国内なのか国外なのかもわからないし、数日の旅になるのか2週間の旅になるのかもわからない。そこまで未知のプラン設定にしてもらうと、もちろん不安も感じるでしょうが、わくわく感がより一層増しそうな気がします。予測できない、先が読めない、というシチュエーションと不便益は相性が良いように感じます。

 不思議を解く、という設定にも、不便益はおおいに関係します。昔はね、男の子の多くが、アナログ時計を分解してよく遊んだものでした。目覚まし時計は、どうして指定した時間に鳴るんだろう。この針はなぜ、チクタク規則的に動いているんだろう。不思議に思って裏ブタを開けて分解してみる。すると、ネジがあって、歯車があって、コイルの動線があって……とその構造が子供にも少しずつわかってくる。そういう「どうなっているんだろう?」というおのずと湧き上がる不思議への好奇心、問いかけが、デジタル化の進む今の世の中から消えつつあることに、僕は一抹の寂しさを覚えます。社会がスマートになっていけばいくほど、背後に潜む関係性や不思議はどんどん隠されていき、消えていきます。物事の奥に潜む関係性を理解したい、という気持ちも失われていくんです。物事の裏側、仕組みがわかるということは、ある意味、自分事としての視点が養われるということですよね。それだけでなく、同時に問いを立てたくなる状況も失われてしまう。不思議を問う状況があるほうが、人間って豊かに生活できるのではないかと思います。…」

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未確定な未来を自ら進んで体験する冒険!
posted by Fukutake at 08:16| 日記