2021年03月14日

女を怒らせるな

「ツチヤの口車」 土屋賢二 文藝春秋 2005年

女の怒り方 p93〜

 「わたしは子どものころから色々女に叱られてきた。そのおかげで、ずいぶん人間的に進歩できたと思う。とくに神妙な顔つきをするのが上手になった。これまでの経験から、わたしは五つの仮説を立てている。

1 女が叱るときは怒っている。
女が叱るとき、寝言を言っているのではない。目を開けているのだから、また冗談を言っているのでもない。ためしに笑ってみれば、決して喜ばないことが分かるであろう。さらに、独り言を言っているわけでもない。ためしにあくびをしたり漫画を読んでみれば、喜ばないことが分かるはずだ。やったことはないが、聖書のギリシャ語原典を読んでみても喜ばないだろう。本気で怒っていると考えるのが無難である(どっちみち事態は無難ではないが)。

2 女が怒るのには理由がある。
 女が怒ると、たいてい何事かしゃべるが、これは怒っている理由を述べていると考えて間違いない。黙って怒ることもあるが、これは理由がないということではない。理由をたずねると最低二時間は説明を聞かされるはずである。こういうときは、気づかないふりをして何もたずねない方がよい。できれば用事を思い出したふりをして外出するのがよい。場合によってはそのまま帰らない方がよい。

3 女が怒る理由は理解できない。
 女が怒る理由は本人の説明を聞いても理解できない。聞くふりをしても理解できない。たとえ理解できたと思っても安心できない。「帰宅が遅い」という理由で怒られたからと思って早く帰宅すると「帰宅が早い」という理由で怒られたりするのだ。
 だから怒る理由は絶対に理解できないと思った方が無難である。だがやっかいなことに、男が直ちに理解しないと女の怒りは激しくなるため、男は理解したふりをするしかない。始末の悪いことに、女は男が同じ過ちを繰り返すと激怒する。このため、理解したふりだけだと、同じ過ちを繰り返し、厳しく注意される恐れがある(わたしの調査では、注意の内容は同じだが、過ちを犯す回数の二乗に比例して厳しさが増すという結果が出ている)。

4 女は妥協しない。
 女は自分の主張を百パーセント貫こうとする。男だったら、「この相手に怒りをぶつけても自分に被害が及ばないか」「怒る時間と体力があるか」などを検討したうえではじめて怒るから、強い相手に怒りをおぼえたり、重病のときに怒ることはない。何より無難な妥協の道を探ろうとする。これに対し女は一切の妥協を排して徹底的に闘う。不思議なことに、女はたいてい戦争絶対反対の平和主義者だ。…」

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とかく女を怒らせてはならない。


posted by Fukutake at 06:38| 日記