2020年12月14日

般若心経

「生きて死ぬ智慧」 柳澤桂子 小学館

心訳 般若心経 −−科学的解釈で美しい現代語訳に

「すべてを知り 覚った方に謹んで申し上げます 聖なる観音は求道者として 真理に対し正しい智慧の完成をめざしていたときに 宇宙に存在するものには 五つの要素があることに気づきました
お聞きなさい これらの構成要素は 実体をもたないのです。形あるものは形がなく 形のないものは形があるのです 感覚、表象、意志、知識も すべて実体がないのです
お聞きなさい 彼はこれらの要素が「空」であって 生じることもなく 無くなることもなく 汚れることもなくきれいになることもないと知ったのです
お聞きなさい 私たちは 広大な宇宙のなかに存在します 宇宙では形という固定したものはありません 実体がないのです 宇宙は粒子に満ちています 粒子は自由に動き回って形を変えて おたがいの関係の安定したところで静止します
お聞きなさい 形のあるもの いいかえれば物質的存在を 私たちが現象としてとらえているのですが 現象というものは 時々刻々変化するものであって変化しない実体というものではありません 実体がないからこそ 形をつくれるのです 実体がなくて 変化するからこそ 物質であることができるのです
お聞きなさい あなたも 宇宙のなかで 粒子でできています 宇宙のなかの ほかの粒子と一つづきです ですから宇宙も「空」です あなたという実体はないのです あなたと宇宙は一つです 宇宙は一つづきですから 生じたということもなく なくなるということもありません きれいだとか 汚いだとかということもありません 増すこともなく 減ることもありません 「空」にはそのような 取るに足りないことはないのです
お聞きなさい だから 「空」という状態には 形もなく 感覚もなく 意志もなく 知識もありません 眼もなく 耳もなく 鼻も泣く 舌もなく 身体もなく 心もなく 形もなく 声もなく 香りもなく あなたをさわるものもなく 心の対象もありません 実体がないのですから 「空」には 物質的存在も 感覚も 感じた概念を構成する働きも 意志も 知識もありません
眼の領域から意識の領域に至るまで すべてがないのです
真理に対する正しい智慧がないということもなく それが尽きるということもありません 迷いもなく 迷いがなくなるということもありません それは「空」の心をもつ人は 迷いがあっても 迷いがないときとおなじ心でいられるからです こうしてついに 老いもなく 死もなく 老いと死がなくなるということもないという心に至るのです 老いと死が実際にあっても それを恐れることがないのです 苦しみも 苦しみの原因も 苦しみをおさえることも 苦しみをおさえる方法もない 知ることもなく得ることもない
得るということがないから 永遠なるものを求めて永遠に努力し 心を覆われることもなく生きていけます 心を覆うものがないから 恐れがなく 道理をまちがえるということがないから 永遠の平和に入っていけるのです
私たちが あらゆるものを 「空」とするために 削りとり 削りとったことさえも削り取るとき 私たちは深い理性をもち 「空」なる智慧を身につけたものになれるのです
真理を求める人は まちがった考えや無理な要求をもちません 無常のなかで暮らしながら 楽園を発見し 永遠のいのちに目覚めているのです 永遠のいのちに目覚めた人は 苦のなかにいて 苦のままで 幸せに生きることができるのです
深い理性の智慧のおかげで 無上のほとけのこころ ほとけのいのちは すべての人の胸に宿っていることを悟ることができました このように過去・現在・未来の三世の人々と三世のほとけとは永遠に存在しつづけます 深い理性の智慧もまた 永遠にわたって存在するということです
それゆえに ほとけの智慧は 大いなるまことの言葉です いっさいの智慧です これ以上のまことの言葉はありません いっさいの苦を取りのぞく 真実の言葉は 智慧の世界の完成において次のように説かれました

行くものよ 行くものよ 彼岸に行くものよ 悟りよ幸あれ
これで 智慧の完成の言葉はおわりました」

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「行くものよ 行くものよ」
posted by Fukutake at 11:54| 日記