2020年01月05日

エイズと抗体

「成功の暗号」 − 心の基本ソフトウェア− 村上和雄 桐書房 2001年

抗体について
p64〜

 「体の中には、素晴らしい防衛機能があります。すなわち、何万、何千万という病原菌が入ってきても、普通の場合にはそれを撃退する装置がちゃんと備わっています。それは「抗体」です。人間にも他の動物にも、体の外から体内に入ってきた細菌などの侵入者に対して、抗体と呼ばれる物質をつくり出し、それを血液中に分泌して、体を防御する働きが備わっています。この抗体は、外からの侵入者が体の中で勝手に振る舞わないように、捕らえて排除する役目をしているのです。
 つまり、生体は、ありとあらゆる異物に対して抗体をつくることができ、ヒトでは、およそ一〇〇万種類もの抗体をつくることができると考えられています。
 それでは、どのようにして百万種類もの抗体をつくることができるのでしょうか?
 これはたいへん不思議なことで、どのようなものがどれだけ入ってくるか分からないのに、それをすべて生体は予知して、そのための遺伝子暗号を全部書き込んでいるのでしょうか?
 抗体はタンパク質からできていますが、遺伝子にその抗体をつくる暗号が書いていないとできないのです。そうすると体は入ってくるかどうかも分からない何千万もの病原菌に対する情報を、全部持っているのでしょうか?これは、免疫学の大きなナゾでした。
 そのなぞが解けたのです。この研究に大きな貢献をしたのが、一九八七年にノーベル医学・生理学賞を受賞された利根川進さんです。
 遺伝子工学的な手法を用いて、マウスやヒトの抗体の遺伝子を微生物に大量につくらせることにより、その遺伝子や周辺の暗号が解析された結果、生体の中では、抗体の遺伝子をいくつにも分けて、部品化して持っていて、それを必要に応じて自由に組み合わせて、計算上は、なんと一〇〇億通りの抗体をつくることができるということが明らかになりました。つまり、部品を替えることによって、いろいろな車がつくられるようなものです。つまり、生体内で遺伝子組み換えが自然に行われていたことになります。
 基本的な部品は少なくても、その組み合わせで何千万という抗体がつくられますから、少々の病原菌が入ってきても大丈夫なように、体は守られているのです。このように、私たちの体は素晴らしい仕組みで守られていますから、少々の病原菌が入ってきても病気にはならないのです。
 ところが、エイズは、その抗体をつくる本拠地を襲うのです。したがって正確に言うと、人はエイズでは死にません。しかし、エイズに感染することによって、素晴らしい防衛機能が侵されて、普通では死なない病気で死ぬのです。普段、私たちの体はいかに素晴らしい働きをしてくれているかということを、エイズの出現によって教えてもらったように思います。」


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エイズの怖さの実体
posted by Fukutake at 16:59| 日記