2019年11月21日

不平を言うな

「医師は最善を尽くしているか Better: a surgeon’s notes on performance」 アトゥール・ガワンデ 原井宏明訳 みすず書房 2013年

あとがき より
医学生への五つのアドバイス(その2)
p232〜
 「二つ目のアドバイスは、「不平を漏らすな」である。医師にとっての不満の種が尽きないことは当然である。未明の呼び出し、無意味な書類の山、コンピューターの故障、金曜日の午後六時にかぎって新しい問題が出てくる。疲れに打ちのめされたらどんな気持ちになるかはだれでも知っている。しかし、医療において、医師が不満を漏らすのを聞くことほど、周りのやる気を奪うものはない。
 病院のカフェテリアで外科医と看護師の集団と一緒にランチをしたとき、会話の始まりはとでも楽しかった。… しかし、外科医の一人が、胆嚢の重い感染症のために先週日曜日に診た女性患者について、今朝二時に救命救急室から呼び出された時の苦しい話をしはじめた。彼は先週患者に、最初は入院して
抗生物質と補液で治療し、炎症が治るまで待ってから手術した方がいい、と伝えていた。しかし、救命救急室の医師は患者に、その案は危険だ、いますぐ手術した方がいい、と話してしまっていた。「あの救急室の医者は間違っている」と外科医は言う。「間違っているだけじゃない、常識がない。患者に話す前に私に一本電話をかけ、いまどうなっているか、どうするか、私と相談すべきだった。あとで、救急室の医者に問いただしたが、まったく謝る気がなかった」この話のあと、その場の他の者からも、同じような失礼なふるまいの話がぞろぞろ出てきた。ランチの後病棟に戻るときには、みんな怒りと自己憐憫を感じていた。
 医療は、試される職業である。それは、疾患の難しさのためでなく、ほんの一部しかコントロールできないような状況で、他人と仕事をすることの難しさのためなのである。… 困難な局面にさしかかったとき、駆け寄ってきてくれるコーチはおらず、医師は自分で自分を励まさなければならない。しかし、医師はそれがうまいとは言えない。会議室や学会場、病院のカフェテリアなど、医師が集うところならどこでも、会話の重心はわれわれを取り囲む災いについて長談義に傾いてしまう。
 しかし、これに抵抗しなければならない。災いの長談義はつまらないし、何も解決しないし、人を落ち込ませる。太陽のように明るくふるまえというわけではない。何かの話ができるように準備しておきない。読んだ本にあったアイデア、出会った面白い問題、何もなければ天気の話でもいい。それでも会話が続けられるかどうか試してみてほしい。」


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愚痴を言うな。

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posted by Fukutake at 10:52| 日記