2019年09月02日

南北問題

「クルーグマンの視座」(ハーバード・ビジネス・レビュー論考集)
ポール・クルーグマン著 北村行伸訳 ダイアモンド社 2008年

第三世界は第一世界の脅威ではない

本当の脅威とは何か p106〜

 「第三世界との競争が先進国にとって大きな問題だという見方は、理論的にも疑わしく、データからもはっきりと否定された。ではなぜこのような見方が出てきたのだろうか。
 単なる学問上の空論なのだろうか。一つ言えることは、第三世界との競争の危険性を唱える人たちは間違いなく、これこそが重要な問題だ、と考えていることである。ECは低賃金国との競争についての注釈を、単に余白を埋めるために白書に書き加えたわけではなかった。政策立案者や知識人が低賃金国との競争の悪影響を強調するのが重要だと考えたのなら、経済学者やビジネス界のリーダーたちがその見方は間違いだと指摘することも重要である。
 考え方は重要である。最近の新聞報道によれば、アメリカとフランスは、賃金と労働条件の国際基準を次回のGATT交渉の議題にするよう求めることで、合意に達したという。アメリカの高官は間違いなく、これは第三世界の労働者の利益を考えているものだと主張するだろう。しかし、発展途上国は、こうした国際基準化は自分たちを世界市場にアクセスさせないために、途上国の唯一の競争優位である労働力を活用することを妨害するものだとして警告を発している。途上国の言うとおりで、これは人道主義的な配慮という名の名分を借りた保護主義にほかならない。
 特に懸念されるのは、こうした隠れみのを着けた保護主義が、結局は、あからさまな貿易障壁につながっていくことである。たとえば、ロバート・カットナーはかねてより、繊維と繊維製品の国別市場占有率を固定した多国間繊維協定(MFA)にのっとってすべての世界市場を運用すべきだと主張している。要するに、彼は世界市場をカルテル化したいと思っているのである。こうした提案はまだ政策論議の対象にはなっていないが、第三世界の成長が第一世界の問題の元凶であるかのようなまったく信じがたい考え方に対し、影響力ある有力者たちがその肩を持つようになると、世界貿易をがんじがらめに規制してしまうことになりかねない。
 ここで論じているのは、狭い範囲の経済問題ではない。西側諸国が自分たちの生活水準を守るのだと誤って信じ込み、貿易障壁を設けるようになれば、その影響は今日の世界経済の最も有望な側面を台無しにすることになる。すなわち、世界では今や広範囲な経済開発が始まろうとしており、何億、いや何十億と言う人々の生活の向上が期待できるのである。第三世界の経済成長はそのための機会なのであって、脅威ではない。結局のところ、世界経済にとって本当に危険なのは、第三世界の成功そのものではなく、我々が第三世界の成功を恐れることなのである。」

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保護主義蔓延の脅威は今や現実となりつつある。

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posted by Fukutake at 08:43| 日記