「徒然草 第九十一段(後段)」
(現代語訳)
「(赤舌日(しゃくぜつにち、物忌みの日)を避けるなどという)こんな馬鹿げたことを言いはじめたのは何故かといえば、そもそも、この世は絶えず変化を続けている境界であって、存在していると見るものも、そのままの状態で存在を続けることはあり得ないし、始めのあることも、それが支障なく進行して終わりが全うできるということはない。人間の願望は実現するためしがない。そのくせ願望する事柄は絶えることがない。あれこれと思い煩って人の心は常に動揺している。この世にある物すべては幻であり変化きわまりない物である。何事も一瞬間といえども現状を維持するものはない。こういう道理を知らないからのことである。「吉日に悪を行えば、結果は必ず凶である。悪日に善を行えば、結果は絶対に吉である」と言ってある。吉か凶かはそれを行う人によってきまるので、日によるものではない。」
(原文)
「…その故は、無常変易の境、ありと見るものも存せず。始めある事も終りなし。志は遂げ図。望みは絶えず。人の心不定なり。物皆幻化なり。何事か暫くも住する。この理を知らざるなり。「吉日に悪をなすに、必ず凶なり。悪日に善を行ふに、必ず吉なり」と言へり。吉凶は、人によりて、日によらず。」
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手相、占い、風水など何と人々の願望が古今不滅であることか。