2018年08月10日

国債は国民の借金?

「景気と経済政策」(その1)
  小野善郎 岩波新書 1998年

政府の借金と国の借金の混同

84p〜

 「まず、国債の発行を続ければ国を借金漬けにするため、経済が立ち行かなくなるという意味について考えよう。実はこの主張には、政府の赤字と国全体の赤字との、重大な混同がある。ここでいう「国」とは政府部門なのであって、日本という国全体の話ではない。国という言葉は「国全体」という意味とともに「政府」という意味にも使われるために、このような混同が起こっているのである。
 国債発行によって財政赤字が累積するということは、政府部門の民間に対する負債がたまっていることを意味する。他方、民間の資産は土地や株式などの他の資産と国債との合計であるから、国債発行による政府部門の負債の増大があれば、それと同時に民間部門では、ちょうどそれと同額の国債という資産蓄積が起こっている。ところで、国全体の資産とは、民間資産と政府資産・負債との合計である。したがって、国債額いくらたまっても、またいくら減っても、負債と資産がちょうど相殺されて、国全体の資産には何の変わりもないのである。このようなことをいうとき、政府・大蔵省は民間のことをすっかり忘れ、自分こそ「国」そのものだと勘違いし、自分の借金がそのまま国全体の借金だと思い込んでしまっているのであろうか。

 それでは、本当の意味での国の借金とは何であろうか。それは外国への借金、すなわち対外債務のことである。対外債務が膨れ上がれば、その元金と利子の支払いによって、資産が日本から外国へ流れる。そのため、極端に対外債務が増大して、その利子が日本全体の総生産を上回るようにでもなれば、日本人は作ったものをすべてを外国への利子支払いに使わなければならず、何も食べることができなくなり、確かに国の経済が立ち行かなくなってしまう。ところが現実の日本は「対外債務」どころか「対外資産」を世界一ため込んでおり、国が借金で倒れるということは考えられない状況にある。ため過ぎて、アメリカから文句を言われているくらいなのである。(次回に続く)

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posted by Fukutake at 11:23| 日記