2017年01月30日

政治とは何か

「論語」宮崎市定 現代語訳 岩波現代文庫 2000年


1 子路第十三 303

子路問政。子曰。先之労之。曰。無倦。

 (子路、政を問う。子曰く、これに先んじ、これを労う。益を問う。曰く、倦むことなかれ。)

 訳 子路が政治のやり方を尋ねた。子曰く、部下に先立って働き、思いやりを示すことだ。子路曰く、ただそれだけですか。子曰く、ただそれだけのことを根気よくやればよい。


2 同編 318

 葉公問政。子曰。近者説。遠者来。

 (葉公、政を問う。子曰く、近き者説(よろこ)べば、遠き者来たる。)

 訳 葉公が政治のやり方を尋ねた。子曰く、近い者が説(よろこ)ぶような政治をすれば、遠方の者まで懐(なつ)いて来るものです。

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posted by Fukutake at 11:39| 日記

2017年01月24日

夏目漱石

「明治の話題」柴田宵曲 ちくま学芸文庫 2006年

36p 「投票」より抜粋

夏目漱石

 「…『太陽』が名家投票を募ったのは明治四十二年であったが、その結果が誌上に発表されたのを見て、当選者の一人である夏目漱石が、投票に関する自分の意見を「朝日新聞」に発表した。投票なるものは所詮優劣の相場を定めることに帰著する。己の相場を、勝手次第に、自家意志の存在を認めることなしに他人がきめてしまふのだから、多数の暴君が同盟したと同じ事である。議会の投票なども公平だからやると思ふのは間違ひで、ああしなければ決着が付かないから、不公平な事を敢えてしてゐるに過ぎぬ、といふのである。
 この投票の結果は、当選者に金杯を贈ることになってゐた。漱石の一文
を見た博文館からは、早速坪谷水哉がやって来て、あなたの説は拝見したが、此方の計画もある事だから、金杯だけは受けたらどうだろう、もし人が何とか云ったら、坪谷が来て無理に押し付けて行ったと答へれば差支えあるまい、と云った。漱石はこの勧誘に対し、金杯だけはいけない、投票には反対だが金杯は貰ふといふことになると、私の主意が立たないから、と云って謝絶した。」

文部省から贈られる博士号を辞退するより二年前の話。
posted by Fukutake at 11:40| 日記

2017年01月16日

人間のサイズ

「ダーウィン以来」 スティーヴン・ジェイ・グールド 
(浦本昌紀・寺田 鴻 訳) ハヤカワ文庫 1995年

22章 人間の知能の評価 より   272p〜

 「…人間が現在機能しているように機能するためにはちょうど今のような大きさでなければならない、と、もっと強く論じ主張することができる。F.W.ウェントはおもしろい挑発的な論文の中で、われわれが知っているような人間生活はアリ程度の大きさでは不可能だということを明らかにした(とりあえず知能の問題と脳が小さい問題とを回避しうるものと仮定して--実際は回避できないのだが)。一つの物体が大きくなるにつれて、表面積に比べて重量が非常な速さで増加するので、小さな動物ほど体積に比して表面積の割合が非常に大きい。彼らは表面力が支配する世界に住んでいるが、その力はわれわれにはほとんど何の影響もおよぼさない。

 アリの大きさをした男が服を着たら、表面付着力のためにそれを脱げないだろう。水滴の大きさには下限があるからシャワーを浴びるのは不可能だろう。一つ一つの水滴は大きな丸石のような勢いで襲いかかるだろう。たとえこの小さな人間が何とかして体を濡らすことができて、さてタオルで体を拭こうとしても、一生涯タオルにへばり付いていることになるだろう。彼は液体を注ぐこともできなければ、火を点火することもできない(というのは、炎は長さが数ミリはなければ安定しないからである。)自分の大きさに合った本を作るために十分に薄い金箔をうち延ばしたにしても、表面付着力のためにページをめくることができないだろう。

 人間の技能や行動はうまいぐあいにわれわれの大きさに調和しているのだ。われわれの背丈は現在の二倍の高さであることはできないだろう。なぜなら、そうなると、落下時の運動エネルギーは一六倍から三二倍大きくなり、またわれわれの体重も(八倍になっていて)脚が支えうる限度を越えてしまうからである。八フィートも九フィートもある大きな人間は、若くして死ぬか、あるいは関節と骨の損傷で早い時期に障害者になるかである。また、われわれの背丈が半分であったなら、大形の動物を狩るに足るだけの力で棍棒をふるうことができなかったろう。(なぜなら、運動エネルギーは一六分の一ないし三二分の一に減ってしまうからである)。われわれは槍や矢に十分な勢いを与えることができなかっただろう。また原始的な道具を使って木を切ったり裂いたり、つるはしやたがねを使って鉱物を掘り出すことなどできなかっただろう。これらのことがらはわれわれ人間の歴史的な発達において基本的な活動であったわけだから、人間の進化の筋道は、人間に非常に近い大きさの動物によってしかたどることはできなかったのだ、というふうに結論づけなければならない。…」


まさに人間の体のサイズがヒト科の繁栄に不可欠な条件だったのですね。なるほどと思います。
posted by Fukutake at 08:17| 日記